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MRの価値をもっと高めたい

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内科医としての診療活動と並行して、各製薬会社のMRの教育研修に、宮本研先生は熱心に取り組んでいます。
MRの価値を高めることが日本の医療を向上させることにつながる、と考えているからだそうです。
これからの時代のMRは営業一辺倒ではなく、医師のパートナーとして医療の一端を担い、信頼のおける「医薬品の代理人」を目指してほしいと語ります。

宮本 研 先生

  • 医師・医薬コンサルタント
  • 千葉・柏リハビリテーション病院 人工透析内科部長
  • 有限会社オフィス・ミヤジン 専務取締役

MRの仕事の価値が高まれば医療の質が向上する

私は2001年に医師になりました。
臨床経験を積み始めたころにARBが発売され、売り込みが激しい時期にたくさんのMRさんと出会う機会がありました。当時は接待がありまして、私は接待をする側の理由にものすごく興味を持ちました。

担当者が短期間で辞めたり入れ替わったり、人の出入りが激しい職種なんだなと気がつきました。
たくさんのMRさんが病院に長時間いるわりにはあまり医師と話はできないし、廊下に立っておじぎばかりしている。あまりにももったいないではないか、といつも思っていました。

たまたまあるメーカーさんから、高血圧の勉強会を社内でしてくれないかという依頼があり、初めて営業所の中まで入って、MRとは何をしている職業なのかを詳しく見聞きすることができました。そのときの印象は何やら古臭い仕事だな、というものでした。その後、別の会社から新人研修に呼ばれ、本社で2時間くらい話をさせていただいたときに、かなりの衝撃を受けました。病院で会うMRさんと本社で会った新人MRさんとの姿があまりにも違うのです。
若くてキラキラしていて、医療に対する夢をみなさんが語り、病院で萎縮している多くの現実のMRさんとのギャップに驚きました。

これは会社にかかわらず、製薬業界の営業体制や営業習慣に大きな問題があるのではないかと感じました。
夢と理想を抱いてMRを目指してきたのに、医療現場に配属されるとなかなかそうはいかない。
私は、MRの仕事の価値を高めるために何かお手伝いができないものか、と考えました。
そして、医師の仕事と並行してMR研修教育をもう1つの仕事とする決心をしました。医師と出会うMRさんの価値が高まれば日本の医療はもっとよくなるはずだ、という信念のもとに、8年間教育研修活動を続けています。

症例検討会や診療ロールプレイなども取り入れて

いまいくつかの製薬会社からMRさんの教育研修を依頼されていますが、特に力を入れているのは病態生理です。
なぜ病気が起こり進行していくのか、その原因と各医薬品の薬効を合体させた医学教育です。医師が病院内で行っている症例検討会のパターンを応用し、中身の濃いディスカッションなどをしています。

模擬診療の形で医師対患者のロールプレイングも行っています。
患者役を私がして、医師役をMRさんがします。
MRさんはかなり知識が豊富ですから、医師役をするといろいろなことを話します。それに対して患者役の私が突っ込んだり弱点を指摘したりするわけです。

参加したMRさんが共通しておっしゃるのは、「医師の視点に初めて気がついた」という驚きの感想です。
薬のことはいくらでも話ができるのに、患者を診療するという設定になると知識の足りなさに気づく。
顧客である医師の視点や考え方が痛烈にわかる、とどの会社の参加者もおっしゃっています。

医師に嫌われないMRであればよい

どこの製薬会社でも、MRは「医師に好かれなさい」という教育をしています。
しかし私の持論は、MRは「医師に嫌われなければいい」というスタンスです。病院内でMR活動中に排除を受けなければそれでOKです。そのためには医療現場の常識から外れないことです。診療行為だったり研究行為だったり、顧客の立ち位置までシミュレーションして考えるトレーニングが絶対必要です。よくある好ましからぬMRさんのパターンは、会社の事情を一方的に展開して話すことです。

上司は、「医師のニーズを探ってこい」とよく言うのですけども、医師のニーズはその場その場で変わります。
ディテーリング中に必ず問いかけをしなさい、と私は言っています。医師のニーズは短時間で切り替わっていくものですから、ある程度アドリブが求められる。アドリブで答えられるMRさんは医師にとって心地よく、会話を通じて優秀だと認知されるのです。

私は「診療思考」と称しているのですが、医師の診療上での思考パターンがわかるMRさんであれば、結果的には好かれるであろうと思います。ただし、それが目的ではない。MRさんは医師に好かれることを目的としてはいけないというのが私の考えです。医師の処方は、医学的な考え方やMR活動への評価などで日々変わりうるものです。
自分の担当製品の処方が増えたとしても、顧客に好かれたからだと認識しない方が現実に近いと思います。

パートナーシップが求められる時代に

これからの時代のMRさんには、医師のパートナーとしての役割がより大きく求められるのではないかと思います。
近年の薬物療法においては、医師一人で処方を決めるのが容易でない難解な製品群がいくつもあります。ですからMRさんは医療現場にある程度の期間滞在して、日々出てくる疑問に対して駐在しながらリアルタイムに答えていけるようになることが望ましいと考えます。
これまでのキャリアを活用するためにも、医療担当者と一緒に考える学術系の仕事に移っていかなくてはいけないだろうと思います。

いま日本には64,000人のMRさんがいますので、その人たちが正しい医学知識を持ち、医療担当者のパートナーとして活動すれば、医療の質はかなり向上するはずです。普段の訪問活動を無駄にせず、顧客が取り組んでいる医療行為をリアルタイムで学び、かつそれを支えることができれば、十分に職業の価値は上がっていくと思います。
結果的には製品の売り上げを伸ばすことができるでしょう。

一方、われわれ医療行為者にとってもメリットは大きいとみています。本当に優秀なMRさんは、製品の代理人に近い存在です。いろいろな質問をしてみたいし、実際に深く討議できるパートナーです。
ぜひ、安心して任せられる代理人になってほしいと思います。

MR活動の社会的な価値を高めよう

MRさんが1回10分間医師と話をしたら、いくら売れるのかは誰もわかりません。しかしコストはわかっていて、1回の面会で1万円以上かかっています。医療費の中からその経費をいただく形でMRさんは医師と会っているわけです。そういうコスト意識とか価値の感覚がない中で、漫然とMR活動をすべきではありません。
日本では医療体制上、これだけの高いMR活動費用をまだ許容しているわけです。

その一方、MRさんたちが活動しているからこそ、比較的処方ミスが少ない、医療事故が少ないのだとも言えます。
しかし患者さんが損害を被るようなきっかけが、MRさんたちによる過剰な営業活動だったことも過去にはありました。MRさんと医師が甘い考えで妥協してしまったことが、処方決断の質を高めず、医療不信の原因となったこともありました。

現在のMRさんの活動は営業一辺倒の昔よりも、かなり質は高くなっていますが、かけたコストを社会的な価値として国民に認めさせることが必要です。MRさんの活動が活発化することが医療の公正さを歪めるのではなく、医療を向上させるほうへつながっていってほしいわけです。医療業界の古臭い慣習とか閉鎖的な部分の修正のためにもMRさんの活動がもっと役立ってほしい、と私は期待しています。

【参考】宮本 研 先生のFacebookページ
→ポストMRを考える【カタルシス編】
https://www.facebook.com/postmrcatharsis
→新世代MR講座【キュレーション編】
https://www.facebook.com/officemiyajinmrconsulting

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