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次世代MRが目指すべき方向性を探る
沼田 佳之 氏
- エルゼビア・ジャパン株式会社 『Monthlyミクス』編集長
環境の変化とともにMRへのニーズが変わる
2000年以降、製薬企業が雇用するMRの数は内資系・外資系ともに年々増加してきました。
ところが、ここにきて生活習慣病薬など年商1000億円を超える大型品の特許切れが相次ぎ、2014年から大手企業を中心にMR数は減少傾向に転じ始めています。一方、それを補うような形でCSOのコントラクトMRとジェネリック企業のMRの数が増えている状況です。
こうした現象は医薬品マーケットの変化からも読み取れます。
製薬企業各社の新薬パイプラインを見ていくと、ARBやスタチンのようなマス市場向けブロックバスターの開発品が少なくなっています。一方で中枢神経、がん、骨領域などを中心に、年商200~300億円といった中規模新薬の開発に注力する動きが強まっています。
今後5~10年後の医薬品マーケットは、これまでのようなブロックバスター中心から、ニッチ・スペシャリティー領域にシフトするため、新薬メーカーの収益構造にも変化が見られるでしょう。今後は研究開発費が年々増加するなかで、営業利益をいかに効率よく確保するかが経営サイドにとっての重要課題となります。このため今後のMR活動は、従来のようなコール数を上げることでパーフォーマンスを発揮したshare of voice(SOV)を継続的に行うだけでは、新薬の市場浸透と価値の最大化に及ばなくなると危惧しています。
逆に、がん、中枢神経、整形などのスペシャリティ領域で、より深く専門的な情報について医師と共有する活動が求められるでしょう。一人ひとりの患者さんによって病態や病状がかなり異なりますので、個別化医療に近い形で医薬品の情報提供が求められ、そのような要望に応えられるMRのニーズが高まってくると思います。
マルチチャネルをいかに使いこなすか
病院の訪問規制や接待規制などでMR活動が大きく変化しています。一方で、eディーテルやWeb講演会、自社Webサイトなどを活用したマルチチャネルによる情報提供が盛んに行われています。
ただ、こうしたチャネル時代になっても、医薬品の安全性・有効性に関する情報提供の主役はMRであることに変わりありません。医師と会えない時代だからこそ、MRと医師のリレーション強化に、チャネルが活用されなければなりません。最も大事なことは「MR+マルチチャネル」であることです。
MRであれば担当医師の好みや行動を分析することができます。この先生は臨床志向型で夜遅く自宅でメールを開封しているとか、この先生は学術志向型で朝方に医局でPCを開き医療系ポータルサイトから情報を収集している、などの行動分析も可能です。例えば、医師がインターネットにアクセスする時間帯にメールを配信し、先生の関心がありそうな話題で自社Webサイトに誘導することもできるでしょう。このようにチャネルで流した情報をMRが翌日フォローすることで、医師の興味や疑念に対し、より深く応えることが可能となります。
まさにチャネル戦略の一つではないかと考えます。
現在、多くの製薬企業がiPadのようなタブレット端末を導入しています。タブレット端末の活用は、マルチチャネル・プロモーションの重要なカギとなると思います。例えば、eディテーリングから配信された自社コンテンツを医師が視聴したとします。MRは医師がコンテンツを視聴したことをタブレットで確認し、その後の訪問で医師の感想を聞いたり疑念を払拭したりする活動を行うことができるのです。
担当医師の志向や行動に応じ、よりカスタマイズされた情報が届くように、いろいろなチャネルを使いこなすマルチチャネル・リテラシーみたいなスキルが、これからのMRには求められるのではないでしょうか(図1)。
医師はどこから情報を入手しているか
「MR+マルチチャネル」戦略の一例として興味深いデータをご紹介します。図2は、医師の情報収集ルートについて調査したデータ(MCI調査)です。薬剤の情報源と、医師がとった「次の行動」について回答を頂きました。
最初の情報源がMRだった場合、うち16.8%の医師が当該企業のWebサイトを閲覧して「あのMRの言っていたことは本当かな」と情報を確認しています。また同様に、24.9%の医師が医療系ポータルサイトへ、4.9%が医療系SNSを見て情報を確認しています。
逆に、最初の情報源が医療系ポータルサイトだった医師の43.6%は、次の行動としてMRに情報の内容を確認しています。情報を得たときの医師の“次の行動”はどのようなものか、マルチチャネルでの情報の置き方を考える1つのヒントになると思います。
後発品への切り替え率が高まる
地域医療の現場も変化の時を迎えています。厚生労働省は2014年4月の診療報酬改定において「地域包括ケア」という概念を打ち出しました(図3)。団塊世代が75歳以上となる2025年をめどに、住宅・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する地域システムの構築を目指すものです。
これからのMR活動は、この指針に沿った形で患者さんの流れをきちんと見ながら調整していく必要があります。
注目すべきポイントの1つとして、DPC病院では後発品の数量シェアを60%まで高めるという施策が打ち出されました。先発品から後発品への切り替えのインセンティブは各医療機関と調剤薬局に設定されています。
このため先発メーカーのプライマリケア担当のMRは、これまでのような製品軸ベースのプロモーションでは医師をはじめ地域医療を担う医療従事者を満足させることが難しくなります。地域包括ケアを念頭に置きながら、そこでの医療・介護サービスを提供する全ての職種をつなぐよう活動がこれからのMRに求められそうです。
一方、後発品市場も国の施策を追い風に拡大基調が継続すると想定されます。これからは、市場性の高い低分子の後発品に加えて、抗体医薬や生物学的製剤などのバイオ後続品が市場参入する動きもあります。
がん、リウマチ領域においてはジェネリックを扱うMRであっても高い専門性が求められるのではないでしょうか。
地域医療に根差したMR活動を
いま各社が重要視しているのがエリア・マーケティングです。講演会、研究会が全国規模からエリア型に変わりつつあります。演者が地域のKOLであれば、お互いの顔が見え医療連携につなげやすいので、参加する先生方にとって得るものが多いからです。
エリア単位で研究会や講演会を企画立案し実施できる能力がMRに求められます。「そんなの、どこでもやっているよ」と先生から参加を断られないように、地域のニーズに密着した企画を立案できなくてはなりません。
さらに、医師の日常診療に寄り添った形で地域医療をサポートできるMRが求められてきます。
医師が日常診療で困っていることのソリューションを提供できるMRになれるかどうかが重要です。
さまざまな形で診療情報が開示されるようになってきました。
MRは担当エリアの診療情報をきちんと把握すれば、それを1つのエビデンスとして活用することができます。
地域におけるベンチマークを構築し、そのデータをベースに医師と話すことも可能です。
地域での医療の全体像が見えると、たとえば、ある疾患の平均在院日数が10日だとわかる。
「先生の病院は15日ですね。少し長くないですか。経営的には10日のほうがよいのではないでしょうか」といったアドバイスもできます。製品軸だけではなく、こうした能力やスキルを持つことも必要かもしれません。
そして最も基本的なことですが、医師と1対1で面会して30分間じっくりと話し込むような「Pain point型ディテーリング」のできるMRを目指しましょう。
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